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トラブル改善につながる技術情報を紹介します。

トラブル改善の思考プロセス – 患者と医師の関係との対比

トラブル改善活動における技術者の思考プロセスは、医師と患者の関係のそれと似ています。理論や経験と照らし合わせながら、実際の現象を論理的に説明できる原因を突き止めるやり方が対策を決定する上での最善のアプローチであるといえます。

医師が患者の容態や診療履歴を十分に把握できれば、根本原因を明らかにし、効果的な治療を施すことができるでしょう。

医師が治療方法を決定するまでの思考プロセス

図は体調の良くない患者が病院で受診し、医師が治療方法を決定するまでの思考プロセスのイメージを示しています。患者と医師の関係では、体が「痛い」ということで受診すると次のように診察が進んでいくでしょう。

医師(医)は「どこが痛いですか?」と聞けば、患者(患)は「お腹がです。」と答えたとする。すると「(医)具体的な場所を教えてください」、「(患)ここです。」と胃に手を当てました。「(医)どのように痛いですか?」と聞くと、「(患)キリキリとします。」と答え、さらに「(医)いつからですか?」と聞き、「(患)数日前からです。」と答えとします。このような診察でのやり取りをしていき、医師は病気とその原因を絞り込んで推定していくでしょう。この段階で、考えられるいくつかの病気の中から“胃潰瘍”が最も可能性が高いと判断したとします。

次のステップとして、内視鏡を体内に挿入して実態の観察と主な原因である“ピロリ菌”が検出できるかを検査し、その判断が正しいかを確認するでしょう。検査結果から判断が正しければそれに適した治療を施し、違えば次の可能性について検査して病気・原因を特定するまで繰り返していきます。もし仮に、若手医師が知識や経験を持ち合わせていない病気の患者を目の前にした場合、豊富な知識や経験があるベテラン医師などに助言を求めて対応するとともに、今後のためにその病気について知識を得ようと学習するのではないでしょうか。

 

患者と医師の関係を生産現場に置き換えると、トラブル品の実物観察と発生状況の情報収集が診察、これをもとに現場を注意深く観察することが検診といった位置づけになります。

技術者がトラブル改善に取り組む際の思考プロセス

図はトラブルと技術者の関係のイメージを示したものです。

しわが発生して困っているので解決してほしいと、離れた生産現場の担当者(担)から電話で依頼があったとします。技術者(技)はまず、発生が確認されたタイミングを確認するでしょう。「(担)生産ラインでの搬送中です。」と答えれば、「(技)具体的に搬送中のどこですか?」と聞き、「(担)ある特定のパスラインのロール間です。」と答えたとします。さらに踏み込んで「(技)発生状況はどうですか?」と生産ラインの動作が安定した定常状態か、あるいはライン速度が増速するなどの非定常状態かを確認します。この段階で考えられる原因や要因をある程度推定できるでしょう。

このように絞り込んだ項目が、本当にトラブルに関係しているかを生産現場での目視・データに加え、可能であれば簡易検証によって確認します。このような結果が推定通りであれば、それに適した対策を施し、違えば次の可能性について原因や要因が特定できるまで同様に確認していくことになります。知識や経験に乏しい技術者であって、この特定に時間がかかるようであればベテラン技術者が助言するでしょうし、技術資料を紹介してくれるかもしれません。

このように患者を治療する医師と生産現場でのトラブルを改善する技術者は、同じような思考プロセスで日々課題解決に取り組んでいるのではないでしょうか。

 

社内外での技術者の交流は、切磋琢磨して成長できるチャンス

医師と技術者において異なる点は連携のし易さです。医師は所属する病院などに縛られずに情報を幅広く取得したり、より専門性の高い医師を紹介しますね。これは患者の治療が最優先であり、「けがをしたり病気になった時に、安全で質の高い医療サービスを受けることができる医療提供体制を確立し、赤ちゃんからお年寄りまで全ての国民が、健康で長生きできる社会を目指しています。(厚生労働省HPより引用)」という理念によるものでしょう。

企業の技術者の場合はそうはいきません。競合他社との競争が存在するためです。特に開発競争が活発な分野のキー技術であれば社内で情報管理され、他社製品を分析してもわからない製造条件などは表に出ることはありません。このような競争が各企業の間に壁をつくり、その中で磨かれ閉じ込められてきた技術は多いように見受けられます。

その一方で企業間が連携して製品を研究開発・生産する事例も少なくありません。それぞれが得意な技術を提供し、魅力的な商品やソリューションを供給するには効率がよいですね。このような取り組みは、医療の場合と同じように、人々の生活をより安全で質の高いものにしていくためにも増えていくでしょう。

技術者であればその第一歩として、同じ分野において同世代の仲間をつくることをお勧めします。関わっている製品は異なっても、技術という面では共通している仲間です。秘密情報を言わない聞かないは当たり前として、理論学習やトラブル対応において、同じようなことで悩んでいることを知って共感することもあるし、ディスカッションしていると解決のヒントになる考えが浮かぶこともあります。社外にも切磋琢磨できる仲間がいると人生が豊かになり、互いに技術者として成長していけるでしょう。

 

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